いくつかの一年点検を終えて、
自分自身への整理と、これから建築を検討されている方へよく頂く質問、疑問点をまとめてみました。
我々は"自然素材"というものを意識して意図的に設計をしている訳ではありませんが、素直に建築をつくるという行為を順序だてて考えて行った時に、一度、いままで使用した素材や好みをリセットして、ニュートラルにしてから構築をしていくのですが、石や木、コンクリートやガラス、スチールや土など各々が持っている素材の性質、力、質感などは、その都度考えるたびに魅力的で、人為的に昨今開発されたような無機質でよくわからない建材と比較をすると、クライアントの思いと相まって、そのような素材を選択することが必然的に多くなります。
ただ一方でガルバリウムや波板やアルミ、PC版、CB、ベニヤその他工業製品も料理の仕方によっては、素敵な表情をとなるため、個人的には好きな材料でもあります。昨今、規格された一定の品質の建材にかこまれていると素材そのものへの関心は薄れ、そのものの特性や性質も気にならないというか、気にならないようにつくられているので、どんどん希薄化しているように思います。
そんなことを考えながらも、いま私の周りぐるりと見渡すと賃貸マンションの王道である木目調のフローリングに、塗り壁調の白いビニルクロス、プリント加工されたオークっぽい木目調のミニキッチン、大手建材メーカーの既製品のダークな木目調の建具、すきま風のない素敵な網入りのシングルガラスのアルミサッシ、枠も木目調がプリントされたMDFでできています。浴室はプラスチックの小さなユニットバス。パーフェクトです。と、まーそんな感じのものに私自身囲まれて過ごしているようです。
クライアントは、グレードの差はあれどそのような感じのものに囲まれて過ごしてきた方がほとんどで、そこから引渡後に、今までとは違う素材に囲まれ、恩恵をうけつつもとそのクセと末永いお付き合いをしていくことになります。
無垢材の柱や梁などの木材の架構は、特に露出で見えている部分は、湿度や温度によって少しながらも乾燥して縮んだり、湿気で膨張したりします。基本的には徐々に乾燥をしていきやせ、数年でほぼ落ち着きます。時折梁にさけ目などがでてきますが、正常な状態で、特に冬場はバキバキと木が動き音が鳴ることもあります。木材の天板と壁などは特に天板がやせて隙間ができます。ただそこをごまかすためにコーキングを打つような事は(できるだけ クライアントや工務店さんなどの意向にもよります)しません。フローリングで無垢のものを使えば、同様に目地の広がりや、材種や厚みによっては反りや割れも若干出てくることがあります。(それで問題になるようなことは今までありませんが)同様に壁の塗装や漆喰も木材が動いたり、力のかかる部分は割れ目ができる箇所もあります。
特に木製建具は顕著で引渡からしばらくすると若干ながら反ってきます。すぐにお伺いしたいところですが、特には湿度によって元に戻ったりしますので必要以上に調整をせず1年強様子をみます。あまりに動かない場合などには、建具の金物などの調整や現場で調整が難しい時には建具を入院させます。環境の違う場所に嫁ぐ訳ですので、数ヶ月から1年の間は特におてんばです。しばらく温かく見守っていただければ幸いです。とまだ色々とありますが、その都度ご説明はさせていただくとして、
これらのような自然な味やクセとお付き合いをいただけるかが重要です。1,2年もすれば馴れて達観され、季節感や湿度レベルを感じたり楽しまれているお施主さんがほとんどなのですが、新築の場合は、最初に理解をされながらも戸惑われる事が多く、特にこの冬の乾燥時と梅雨の湿気の多い時には感じます。デメリットだけを抜き出すと取っ付きにくそうですが、その質感や性能、品質、空気感、存在感は変えられないものがあります。